鑑定評価額の実務上における出し方
不動産評価のプロである鑑定士は、公的に認められた鑑定評価書を発行することができます。
その際、評価額の出し方の過程についてはオブラートに包まれている印象が強いです。
多くの鑑定HPでは表面的な鑑定関連の専門用語が散りばめられ、難易度が非常に高いように感じられますが、実際は多くの類型(更地や建付地、自用の建物及びその敷地等)で作業プロセスは機械化されていることが実態です。
そこで、鑑定実務のある当事務所代表から作業プロセスの実態(カラクリ)について述べます。
評価額のアタリはどうしているか。
鑑定依頼を受けると、必ず依頼背景や鑑定する条件とともに対象不動産を確認します。
具体的な評価条件を確認できた後は、対象不動産に関連する法規制や現地調査を行うこととなります。
では、評価額のアタリ(基準となるライン)はどう判断しているか。土地に関しては、対象地と代替性があると考える地価公示や各種路線価で判断していることが多いです。(もちろん全ての鑑定士がそうとは限りませんが、公的案件を行っている鑑定士であれば、このような考えが浸透している可能性は極めて高いです。)
評価上のラインを確認した後は、個別性を考慮して、中身(鑑定手法)付けを行います。
鑑定手法を適用する際、事例が命??
鑑定評価の前提条件として…「不動産の鑑定評価とは、不動産の価格に関する専門家の判断であり、意見である~」(不動産鑑定評価基準 第3節(6))という文言があります。
この文言は非常に重要で、正解は一つと限らないことを指しています。すなわち、不動産鑑定士であれば、自身の考えのもと評価額に幅をもたせることが可能であることを示唆しています。
では、評価額に幅をもたせるために最も効果的なことは何か?というと、関連する取引や賃貸の事例をフルに活用することです。
実際には、複数の事例を活用して評価額を求めますが、適用事例は代替競争不動産の事例であれば用いることは可能です。
また、事例は土地のものが多いですが、関連性のある事例と言っても、成約単価を見てみると上下幅が広いことが多いです。
そうなると、鑑定士によって適用事例を選ぶことができるため、ある種、価格調整が可能になる訳です。
そのため、鑑定士によっては同一不動産でも評価額に大きな差が生じていることは珍しくありません。
その原因の一つは、選択した事例の違いであると言っても過言ではありません。
建物はどうしているか?
不動産鑑定士は文系出身が多く、図面や見積書の中身を読む経験がほとんどない方も多いです。
そのため、建物の再調達原価で言うならば、契約書や見積書表紙に記載の工事費に、毎年度の建築物価増減率を乗じて求めたり、建設費を算出できる業者ソフトを用いて、条件を入力して機械的に求めたりする方法が主流と思料しています。(私が知っている限り、このように求める鑑定士が多いです。)
実際に私も建物評価の際は一部として上記の方法は用いていますし、間違っているとは思っていません。
しかし、そこに専門的な奥深さがあるのかと問われると…疑問は思っていただいて構わないと考えています。不動産鑑定士は建物に弱いと言われる所以は、ここにあります。
少し横道逸れますが、その実態を知っているため、私は例え評価額が同じになったとしても、建物評価額の根拠は細かく分析し、建物評価のプロとして責任と評価書の奥深さは追求するようにしています。
なぜカラクリを伝えるのか
鑑定士としての敷居の高さだけが、先行しているように感じるからです。
全国の鑑定士の一部には、医者と同じように鑑定士にも専門分野があると主張される方もおられます。
医者と比較する程の分野が多岐に亘ってあるかは置いておいて…私もその考えには賛同しております。
不動産鑑定士による鑑定評価書が全ての類型を標準的に作成するだけであれば、昨今話題のAIで作成いただくことと、ほとんど変わりはないと思っています。
そのレベルに留まるのであれば、鑑定士としての専門性や敷居はあまり高くないです。
そして、依頼する側の方々にも自分たちが依頼する不動産は、どの鑑定士なら精緻に評価してくれるか考えてほしいのです。
当事務所代表もそうですが、得意分野を明記している鑑定士も少なからずおります。
特徴(スタイル)を掲げている鑑定士もおります。依頼者は、それらを吟味して適材と思われる鑑定士に適切な報酬を支払い、対価として質の高い評価書を授受いただきたい、その想いがあります。